2011/04/20

おとうと



おとうと
わたしには7つ下のおとうとがいる
今おとうとは私の部屋に居候中


昨年の3月の末のふしぎな夜の話
駅からの帰り道
わたしはずっとこのままいつまでも東京でひとりで暮らしていくのか
ということを考えながら歩いていてちょっと途方に暮れていた
もしかしたらこのままひとりでおばさんになっておばあちゃんになって…
部屋のドアを開けてよっこらしょとしたとき
電話なんてかけてこないおとうとから電話がかかってきた
「ちょっと3ヶ月ほどおじゃましたいねんけど」
ついさっきずっとひとりかも…と妄想していたのに
急にたった3ヶ月とはいえ同居人が出来た
その喜びというか驚きは今でも覚えている
なんだか分からないけど新しい生活が始まる予感のわくわくどきどき
おとうとが東京に来るという大事件が起こった春のこと


いつだってそうなんだな
わたしはもうひとりっこだな と思ったときにおとうとは生まれてきて
わたしはもうずっとひとり暮しかな と思ったときに部屋にやってきた


同じ親から生まれたけど
同じ親ではないと思っている


わたしが生まれたとき 両親は20代
小さなアパート 自転車しかない生活
家族3人ひとつ屋根の下


おとうとが生まれたとき 両親は30代 7才のわたし付き
小さな一軒家 ホンダのシビックに乗る生活
家族4人ひとつ屋根の下


親が20代と30代ではだいぶちがうだろう
26歳の母と33歳の母
26歳でわたしを産んだとき 母はわたしが世界で一番かわいいと思った
33歳でおとうとを産んだとき 母は世界中の子どもがかわいいと思った
父は どうだったのかな


わたしとおとうとは二分の一
間に小さなおとうとかいもうとがいたけど こっちの世界に生まれてこれなかった
あの子たちはどこにいったかなぁ
もうちがう命になって生きているかしら
二分の一の確率であの親の元に生まれて来たんだ
同じ小さなボートに乗った船員みたいなもん


3ヶ月 と言っていたのに
もう13ヶ月経った…
まだいる
このままずっと小さな部屋でふたりで暮らすのかなぁ
暑い夏がまた来るのに


































おとうとはたまにおかしなことを言う
「お母さんはね、あーちゃん(わたし)が生きてるだけでうれしいんだよ」
「一緒に出家せえへん?」
「偶然なんてないよ。すべて必然」
わたしが
「どういう意味?」
って聞いても
笑っているだけでなにも教えてくれない






大きな地震があったとき
たったひとりじゃなくてよかったなと思った
おとうとがいてよかったなと思った

















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